対象会社と同じ規模の類似会社から推定したβを用いても、なぜサイズリスクプレミアムが必要なのか

会計目的評価においては、一般的に割引率にサイズリスクプレミアムを加えます。

割引率を計算する際、対象会社の時価総額や事業価値と同程度の価値の類似会社を選定し、WACCの計算におけるβとして用いた場合、そこに会社の規模が反映されているので、追加的にサイズリスクプレミアムを加える必要はないのではないか、との疑問を持たれる方もいるかと存じます。

しかし、理論的には、それでもサイズリスクプレミアムを加算する必要があります。なぜそうなるのでしょうか。それは、サイズリスクプレミアムの算出方法に理由があります。

サイズリスクプレミアムの算出方法

実務で一般的に使用されるサイズリスクプレミアムは、大まかに書きますと、以下のように計算されています。

(サイズリスクプレミアム)=(一定期間の、ある時価総額レンジの企業の実際の株価のリターン)―(サイズリスクプレミアム無しの、同じ期間・規模のCAPMで計算してみた場合の計算上のリターン)

すなわち、かなりシンプルですが、実際のリターンと、CAPMで計算してみたときのリターンを比較しています。その差をCAPMでは説明できない差として、規模に応じた差と解釈しています。そして、(サイズリスクプレミアム無しの、同じ期間・規模のCAPMで計算してみた場合の計算上のリターン)はどのように計算されるかというと、

(同じ規模の企業のβ) × エクイティリスクプレミアム(ERP)+ リスクフリーレート

で計算されます。つまり、βの計算時点で、すでに同規模の企業が選定されています。

結論

同規模の企業のβを使ってCAPMで計算してもなお説明できない実際のリターンとCAPMの差がサイズリスクプレミアムであるため、類似会社として同規模の企業を選んでいたとしても、依然として、サイズリスクプレミアムは含まれていないということができます。

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