パーチェス・プライス・アロケーション(PPA)とは

企業結合会計におけるパーチェス・プライス・アロケーション(PPA)とは、取得原価の配分手続、すなわち取得原価を基礎に、被取得企業から取得した識別可能な資産負債について、取得日の時価/公正価値を割り付けていくとともに、配分差額としてのれんを計算する一連のプロセスのことを意味します。評価対象となる資産負債の範囲には、対象会社の貸借対照表(BS)に元々計上されていない資産、例えば、被取得企業の顧客基盤、技術・ノウハウ、ブランドといった無形資産も評価対象となりえます。
PPAは、企業の投資目的や背景を、のれんという一塊の科目から区分けして財務諸表に精緻に反映することで、投資家を含む利害関係者へ適切に情報提供するとともに、企業結合日における各資産の時価/公正価値に対応する償却費を、企業結合後の期間損益に反映することで、投資の成果をより適切に財務諸表に反映させるという意義があります。
このような背景から、PPAは日本会計基準、国際財務報告基準、米国基準を問わず要求される専門性の高い会計処理であり、また企業結合取引は、企業活動の中でも非経常的かつ金額的にも重要な取引となることが多いため、減損会計とともに、監査上の主要な検討事項(KAM)に多くの企業で取り上げられています。
我が国においても、日本公認会計士協会より「無形資産の評価実務-M&A会計における評価とPPA業務-」(経営研究調査会研究報告第57号)や、「機械設備の評価実務」(経営研究調査会研究報告第66号)といった研究報告が公表されるなど、近年注目度の高い領域であり、高度な専門性と知見を持った評価専門家の関与が必要な領域です。
PPAを進める上でのポイント

PPAにおける無形資産等の評価作業においては、会計基準上の要求に応じた無形資産の識別、識別された無形資産の特性に応じた評価作業(超過収益法、ロイヤルティ免除法、利益差分法等)、WACC/WARA/IRRの分析や、キャピタルチャージの分析等、専門性の高い作業が要求されるため、特に会計監査を前提とする企業の皆様にとっては、経験豊富な専門家の関与が欠かせません。
また、PPAは監査上の重要な論点となることが多く、加えてその専門性から、監査人サイドにおいても評価専門チームを別途組成の上、監査対応が行われることが実務上一般的です。このため、取得企業、被取得企業等の当事者企業、PPAにおける各種評価作業を行う専門家、監査人、監査人サイドの評価専門家と、多くの関連者のコンセンサスを取りながらプロジェクトを進める必要があります。さらに、クロスボーダーM&Aに関連するPPAでは、海外当事者とのコミュニケーション(例えば、現地マネジメントとのコミュニケーション等)も要求されます。
会計基準上、企業結合日後1年内での対応との猶予はありつつも、上記のような背景、また企業結合日BSや、事業計画、その他多くの関連資料の多角的な分析が必要となることを踏まえると、大きな企業結合になればなるほど、PPAにおけるプロジェクトマネジメントの重要性が増します。
さらに、無形資産等の評価だけではなく、PPAにおいては原則として被取得企業の全ての資産負債の時価/公正価値評価が必要となります。無形資産以外に時価/公正価値評価が要求される典型的な科目としては、棚卸資産、動産(機械設備等)、不動産、有価証券といった科目が挙げられますが、再評価を不要とした科目についても、その理由を監査人に説明する必要があります。また先に挙げた有形資産の再評価結果は無形資産の評価作業に影響を与えるため、有形資産の再評価においても、案件全体を見据えた対応が必要となる点に留意が必要です。
Pre-PPA

Pre-PPAとは、投資意思決定段階での暫定的なPPAを意味します。M&Aの意思決定の場面において、対象会社の価値の源泉を定量的に分析することで意思決定の参考とするほか、将来の償却費の影響を意思決定段階において把握することで、企業結合後の利益計画策定の一助となる意義があります。
Pre-PPAは、一般に作業スケジュールが短く、対象会社から入手可能な情報も限定的であること、基準日のBSや事業計画、取得価額等も暫定的な値であることから、ご提出するPre-PPAの結果も、監査人のレビュー前の暫定的な数値(通常はレンジでのお示し)となります。このため、Post-PPA時における追加的な情報入手や、監査人とのコミュニケーションを通じて、最終的な無形資産等の評価結果(また識別される無形資産自体)も変わる可能性がある点は留意が必要です。
一方で、上記のようないくつかの制約はあるものの、意思決定時において将来の暫定的な絵姿を踏まえた判断が行える点、また国内におけるPPAプロセスの重要性の高まりを背景に、M&Aの場面においてPre-PPAを利用する企業は増えています。
フォーカスバリュエーションでは、Pre-PPA業務の経験豊富なメンバーを揃えており、貴社のご要望に応じた業務提供が可能です。
PPAにおける動産評価

PPA(取得対価配分)においては、無形資産の識別・評価に先立ち、貸借対照表に計上されている不動産や動産(機械設備等)を含む有形資産等について、時価(公正価値)評価を行うことが求められます。特に製造業では多額の不動産・機械設備等が計上されていることが一般的であり、取得時点の時価と簿価が大きく乖離している可能性があります。
動産評価は、企業価値評価や無形資産評価のように事業計画に基づくインカム・アプローチを主とする手法とは異なり、個別資産の状態・稼働状況・残存耐用年数等を踏まえ、主としてコスト・アプローチ(再調達原価等)により評価を行う点に特徴があります。そのため、求められるデータ収集や評価プロセスも異なります。さらに、日本の製造業は海外に工場を保有しているケースが多く、評価にあたっては各国のインフレ率を始めとする市場データ等を反映した検討が不可欠です。加えて、PPAの一環として実施する場合には、後続の無形資産評価との整合性や、投資差額を有形資産・無形資産にどの程度配分するか、将来の償却スケジュールへの影響も踏まえ、慎重に検討する必要があります。
これまで日本における機械設備評価の実務は、企業価値評価等と比べて十分に体系化されているとは言い難く、簿価を時価とみなす取扱いが中心となる場面も少なくありませんでした。しかし、世界的なインフレ率の上昇や技術革新に加え、公認会計士協会による機械設備評価に関するガイダンスの公表等を背景として、動産評価の必要性は高まりつつあります。
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加えて、無形資産だけではなく、棚卸資産、動産(機械設備等)評価についても対応が可能です。(不動産については、提携ファームをご紹介いたします)。無形資産以外の時価/公正価値評価が要求されるPPAの対応経験も豊富であり、PPA全体を見据えた対応が可能です。